HOMEお知らせ日本古写経研究所平成24年度 第1回公開研究会

平成24年度 第1回公開研究会

日時

平成24年5月19日(土) 午後3時~4時半

会場

国際仏教学大学院大学 春日講堂
東京都文京区春日2-8-9
アクセス

発表者

楊 婷婷 (本学 プロジェクト研究補助員(RA))
興聖寺蔵『出三蔵記集』の系統について

【発表要旨】

日本古写経研究の進展に伴って、最近は平安時代後期から鎌倉時代にかけて書写された一切経の大半は奈良写経の転写本であると言われている。ところが、開宝蔵(北宋勅版、十世紀後期)の刊記がそのまま書写されている経典は明らかに開宝蔵系本であるが、刊記が書かれていない写経本の中にも開宝蔵からの転写本が存するのではないかと筆者は考えるに至った。
今回は、刊記と千字文の有無が豊富に見られる興聖寺(京都)蔵の『出三蔵記集』に着目した。興聖寺蔵本は15巻揃いの上に、①刊記と千字文二つが有るもの、②刊記だけがあるもの、③千字文だけがあるもの、④刊記も千字文も無いものなどの形式が見られる。その中特に後者の二点(③と④)の経巻について検討を試みた。
千字文については注意しなければならないことがある。それは刊本の系譜によって千字文号は必ずしも一致しない点である。一般に大蔵経刊本に付されている千字文の比較によって、どの系統に属するか大体判断が出来る。加えて、『開宝蔵』の覆刻版と言われる趙城金蔵と高麗初雕版に『出三蔵記集』が大半現存しているので、本文を詳細に比較すれば、興聖寺蔵『出三蔵記集』本が『開宝蔵』の系統に属するか否か判断できる訳である。
このような方法を用いて興聖寺蔵『出三蔵記集』の中、千字文がある写経本(③)と、奈良写経の転写本と想定されていた刊記も千字文も無い写経本(④)数点を開宝蔵系の書写本と位置づけた。

南 宏信 (本学 プロジェクト研究員(PD))
新羅義寂撰『無量寿経述記』の研究 ―恵谷復元本と身延文庫本―

【発表要旨】

新羅僧義寂(7世紀中頃~8世紀初め)は『三国遺事』巻四によれば東海華厳の祖義湘(625~702)の高弟としてその名が挙がり、諸目録に多数著述が散見しているが、現存するのは『法華経論述記』『梵網経菩薩戒本疏』の二書だけである。『無量寿経述記』の現存本は今まで確認されておらず、かつて恵谷隆戒氏が源隆国(1004~1077)『安養集』等から逸文を蒐集して作成した復元本(以下、恵谷復元本)によって概要を知ることができ、復元から三十年以上、唯一の資料として知られてきた。
恵谷氏は新羅浄土教の系譜を浄影寺慧遠(523~592)の系統と、それに対する玄奘(602~664)の唯識系の系統に二分する中で、義寂を慧遠の系統に置く。しかし深貝慈孝氏は新羅僧法位(7世紀頃)『無量寿経疏』を検討することで、そもそも系統を二系統のみに分けることに対して疑問を呈している。
この研究状況下において身延山久遠寺の身延文庫で『無量寿経述記』巻一の断簡が見出された。恵谷復元本の共通部分を対照することにより、身延文庫本は『無量寿経述記』に相違ないことが分かり、解明を更に進めることが可能となった。結果として従来知ることのできなかった一部の科段を見ることができ、また恵谷復元本の一部が修正できた。
本発表では恵谷復元本と身延文庫本の引用経典を検討することにより、『無量寿経述記』の撰述年代を考察する。それにより『法華経論述記』『梵網経菩薩戒本疏』や他の新羅僧との関係を考え直す一助としたい。

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お申し込みはこちらへ

国際仏教学大学院大学 事務局
〒112-0003 東京都文京区春日2-8-9
電話 03-5981-5271
FAX 03-5981-5283
Email nihonkoshakyo14◆icabs.ac.jp(◆をアットマークに変えてください)

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