HOMEお知らせ日本古写経研究所『高僧傳』テキストの變遷と流傳
      ―日本古寫經による檢證 

『高僧傳』テキストの變遷と流傳
      ―日本古寫經による檢證 

平成26年度国際シンポジウム発表要旨
定 源(王招國)(上海師範大學哲學學院敦煌學研究所 准教授) 

『高僧傳』は、梁の沙門である慧皎(497~554)が、後漢の明帝の時代における佛教の中國初傳から南北朝に至る約四百五十年間での活躍した僧の傳記を集録したもので、後の道宣撰『續高僧傳』、贊寧撰『宋高僧傳』など僧傳文獻の先驅を為すものとして中國佛教史、文化史の研究上において極めて貴重な資料である。同傳に關する從來の研究は枚擧に遑ないほどであるが、現行の藏經本のテキストによって遂行されたものが殆どである。
近年、日本古寫經研究の進展に伴って、從來依用した藏經本のテキストに見られない形態を持つ『高僧傳』の古寫經が新たに確認できた。新出する慧皎の序文によれば、同傳のテキストは未完成の段階ですでに抄寫され、世に流傳したという。そうした記録、また實際の古寫經と現行する藏經本のテキストの比較からみると、兩者テキストの相違は決して後世の手によって加筆されたものではなく、もともと初治本と再治本への増補・編纂が行われたのではないと考えられる。
本發表では、まず『高僧傳』刊本のテキストを概観した上でそこから見られる問題點を提起する。次に新出の寫本を紹介するとともに、刊本との異同に注目し、特に刊本に見られない逸文と異文を手掛かりとして、同傳テキストの古態と變遷を辿ることにする。最後に、同傳のテキストの寫本はいままで敦煌寫本では見當たらず、ただ日本で發見されたものであるため、そのテキストの源流と傳播情況について中國側の資料によって探ってみたい。

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