2012年3月 博士(文学)学位取得者
私は本学に入学する以前には、別の大学院で仏教学を学んでおりましたが、当時は自分の研究課題がなかなか解決せず、研究生活に対する励みを失いかけていました。ちょうどその折に、少人数制で仏教学を専門的に学べる本学のことを知りました。充実した研究環境を提供している大学であると聞き、環境を変えることで、私自身の研究熱意が再燃することを期待しつつ、はじめに聴講生として本学の授業を受講いたしました。
一年間の聴講期間でしたが、そこで先生方の熱心な指導姿勢と、本学で学ぶ日本の学生や、海外からの留学生達の明るく逞しい研究意欲に感化され、期待していた以上に研究に対する面白さや興味を再確認することができ、本学に入学することを決めました。
私は聴講期間を終えてから、博士課程の三年次に編入し、それからちょうど三年間で学位を取得することができました。もし、本学に興味を持たれたら、まずは授業を聴講されてみるのも宜しいかもしれません。きっと本学の学風に魅力を感じられることでしょう。
私が本学の学風に触れ、はじめに驚いたのは、学生を一流の研究者に育成されようとする先生方の熱意がたいへん厚く、また学生一人一人に対して懇切丁寧に指導にあたられていることでした。先生方は学生の研究に対する興味や関心に沿って、その研究を全うするために必要な方策や、有効な資料を発案・提示され、学生を的確にゴールへと嚮導されます。本学は少人数制であるために、極めて中身の濃い指導を受けることができます。
仏教学を研究する上では、資料の扱い方に関して、厳密かつ慎重な読解が要求されますが、本学ではサンスクリット語、チベット語、パーリ語、漢文などの様々な文献を、専門の先生方について通読する授業が充実しています。多くの資料に親しみながら、読解力の精度が高められ、資料内容を正確に把握できるようになります。
必修科目の中、特に「仏教学特殊研究」という科目は、学生にとってたいへん有意義なものです。この授業では、担当の学生が研究成果を、本学の先生と学生全員の前で発表します。発表者は著名な先生方や、研究心旺盛な同輩達から有益なコメントを頂くことができるので、発表の度に考察内容を補正しながら、段階的に一つの大きな成果へと結実させることができます。私自身もこの授業で発表させていただいた内容を骨子として、学位論文をまとめることができました。
そして、研究を進めるにあたって欠くことのできない仏典資料や、先行研究を採録した研究図書・雑誌等は、世界中の仏教学に関する資料をほとんど完備している本学付属の図書館で必ず手に取ることができます。資料が必要な時に図書館に行けば、いつでも職員の方が親切にご案内して下さいます。
私が学位取得に至ることができたのも、先生方の的確なご指導と、共に苦心した同学の励ましの賜ですが、三年間研究に集中することができたのは、充実したカリキュラムと多大な蔵書を有する本学の有意義な研究環境があってこそのものであったと実感しています。私は学位取得後の現在も、さらに研究を深めるために本学の研究生として在籍しています。
執筆者は、2012年3月、博士(文学)の学位を取得されました。