HOME留学体験記University of California, Berkeley, the Center for Buddhist Studies (2018-2020)

University of California, Berkeley, the Center for Buddhist Studies (2018-2020)

2018年9月の渡米から2020年10月末の帰国、帰国後から2021年春学期まではZoomを通し、合計6セメスターをUniversity of California, Berkeleyで勉強する機会を頂きました。これも偏に斎藤明先生の助言ならびに本大学の厚いサポートのお陰です。私にとってBerkeleyでの経験は素晴らしい宝となっただけでなく、現在も友人たちと交流が続いていることに感謝し、ここに留学を検討されている方への何かしらの参考になればと思い、私の経験からBerkeleyの授業、生活などについてシェアしたいと思います。

(1)Berkeleyの授業

「留学中に自分は何がしたいか」を軸に決めますが、私はSanskrit語を中心に勉強したいと考え、Alexander von Rospatt先生の Graduate seminar、Sally J. Goldman先生のSanskrit語授業は毎学期取りました。加えて、開講される授業の中から興味のあるもの、自分に必要と思われる授業に関しても、教授もしくはインストラクターにコンタクトを取り受講しました。例えば、Mark Blum先生のGraduate seminar (Readings in Japanese Buddhist Texts) とPure land Buddhism, Osmund Bopearachchi先生の Gandhāran Art in an Indian Context, Kenneth Wong先生の Introductory Burmese, クラスメートのFedde M. de Vriesが2019年夏学期に開講したIntroduction to the Study of Buddhism, ポスドクでBerkeleyにいらしたDr. Ian MacCormack 先生のTibetan Buddhismなどです。加えて、2019年春学期にはOskar von Hinüber先生、故辛嶋静志先生、2019年秋学期にはJan Nattier先生のGraduate seminarが開講され、先生方のご専門のテキストを読む授業にも参加することができました。他にもProseminar in Buddhist Studiesでは、教授と大学院生が様々な角度から仏教や宗教をディスカッションするという授業もありました。

Graduate seminarは週に1回3時間の授業ですが、毎学期異なるジャンルのテキストを読みます。例えば、Alexander von Rospatt先生の Readings in Indian Buddhist TextsではJātaka (2018 fall), Abhidharmakośabhāṣya of Vasubandhu (2019 spring), Vigrahavyāvartanī, Mūlamadhuyamakakārikā (2019 fall), Vasubandhu’s Triṃśikā, Pradīpoddyotana (2020 spring and summer), Abhidharmasamuccaya (2020 fall), Madhyāntavibhāga (2021 spring) と、幅広く勉強することができました。

Doe Library

Berkeleyの語学の授業は、例えばチベット語のクラスは毎日1時間授業があり、初級チベット語のクラスであってもチベット語でプレゼンテーションをするなど内容が非常に高度でした。 Sally J. Goldman先生のSanskrit語授業ではMahābhārata (2019 fall), The Vyākarana-Mahābhāshya of Patanjali (2020 spring), Abhijñānaśākuntalam of Kālidāsa (2020 fall), Mahābhārata_Mausalyaparava-Svargarohaṇaparva (2021 spring) と毎学期異なるテキストを読みました。Sally 先生から、Sanskrit語を好きになって、と言われながら、語学に堪能なクラスメートの中でしどろもどろに訳す自分を恥じる日々でした。ある日突然、Sanskrit語は楽しいと思えるようになった時の喜びは忘れられず、これはSally先生の授業のお陰だと思います。加えて、Subhāṣitasから毎授業2つ暗唱することで、美しい抑揚をつけて詩を唱える楽しさも知りました。

校内のカフェ

(2)Berkeleyの生活

1年間はNorth Berkeleyに位置するNyingma instituteというチベット仏教研究所で寮生活をしました。North Berkeleyは治安が良い地域のため、図書館で深夜まで勉強してから帰宅することが出来ます。この寮生活初日に知り合ったOliviaは、留学当初の一番辛い時期を支えてくれた友人の1人です。寮生活を通して多くの友人を作れたことで、辛い時に泣ける場所をいくつも持てた事は幸運でした。

UC Berkelyは図書館が充実しており、ハリーポッターの世界の様なDoe Library, Doe Library と地下でつながり24時間使えるMoffitt Library, クリスマスシーズンのデコレーションが可愛いMorrison Library、クラスメートと話しながら勉強可能なEngineering Library等が特に気に入り毎日通いました。他にもStudent Unionは多くの学生が勉強の場として活用することができ、校内を転々としながら勉強しました。

Student Union近くのCal Performancesではバレエやコンサートが開かれ、息抜きを兼ねて一流の芸術に触れることが出来ました。息抜きといえば、Berkeleyは気候が温暖で過ごしやすく、少し足を延ばせばピクニックに最適の場所も沢山あります。なお、校内にも自然に触れてリラックスできる場は豊富で、芝生に寝転がり見上げた空、時計塔から見渡したサンフランシスコの絶景は、荒んだ心を開放してくれました。

Super Duper Burgers, Artichoke Basille’s Pizza, Sliver Pizzeriaなど、美味しくサービスもよく、Small talkの好きな定員さんがいるお店が大学周辺には沢山あります。インド、チベット、ビルマ、ケイジャン、エチオピア、日本料理と様々なお店があり、クラスメートとテスト終了後にランチやディナーをするにはもってこいでした。

Sliver Pizzeria
エチオピア料理

(3)UC Berkeleyへの留学

留学における最大の難関は、言葉の壁に加えて異なる文化・環境になじめるかどうかの問題があると思います。この点に関して、UC Berkeleyとthe Center for Buddhist Studiesが留学生にとって素晴らしい環境と思う一番の理由は、勉強をするのに素晴らしい環境であることは言うまでもなく、留学生に勉強のチャンスをくれる体制があるという点が挙げられます。第一に、教授とインストラクターがopen mindedです。例えばAlex先生は、当初の留学期間を延長し勉強することを勧めて下さっただけでなく、留学中に仏教伝道協会(BDK)の奨学金の推薦人、スタンフォード大学の勉強会へ参加する際の身元保証人にもなって下さいました。加えて、Alex先生、Sally先生、Osmund先生は日本帰国後も、Zoomを通して授業に参加させて下さいました。またSally先生を始め教授とインストラクターが、Office hours以外の時間を割いて質問や勉強をサポートして下さったため、何とか授業内容を理解することが出来ました。

次にクラスメートもopen mindedです。留学中にお世話になった故辛嶋先生から頂いたアドバイスの1つに、授業に参加し沢山汗をかきなさい、があります。明らかに学力が足りない私が授業に参加し続けられたのは、クラスメートが励まし助けてくれる環境があったからというのは言うまでもありません。また、ポスドクで来ている皆さんともGraduate seminarを通して知り合うことができ、その内の1人Mengxiaoは、自身がインストラクターのUnder graduate classに私を招待してくれ、博論の内容から一部抜粋し『法華経』の講義をさせてくれました。他にも論文を書くのに必要なCritical thinkingを培うために提出していたWeekly responseでは、インストラクターは内容に加えて英語のアドバイスもくれるなど、惜しみなくサポートしてくれました。

UC Berkeleyが持つ多様性を受け入れる校風、discussion and question partyのような活発な授業、心の度量の深い先生方とクラスメート達、そのどれをとっても、学問的に卓越した人が人間的にも魅力的だということを、Berkeleyの留学を通して知ることができました。この貴重な経験を頂けたことに、改めて感謝します。

冨永曜照