国際仏教学大学院大学
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発表要旨

徐 時儀 (上海師範大学 教授) 


「玄應『一切経音義』の流伝と版本の考察」

 『玄應音義』は、実際は、未完成の草稿であると考えられ、現存する諸本の間には幾つかの異同がある。まず、収録されている仏教典籍の種類が相互に異なる。また、音義の対象となる用語も相違し、その用語の解釈内容にも広略が見られる。これらの異同は、各本の源流を示す重要な手がかりとなる。諸本間の異同に着目して考証した結果、現存諸本は、高麗本と磧砂本の二系統に大別できることがわかった。両者の相異は、おそらく契丹蔵所収の『玄應音義』によって生じたと考えられる。
 敦煌出土の唐代写本断簡や『慧琳音義』に転載された『玄應音義』によって対校すると、高麗本と磧砂本との相異は、開宝蔵が刊行される以前の敦煌写本にも見えることが判明する。それらの写本のうち、磧砂本巻五における二十一部の経典をすべて記載した写本は、開宝蔵の初刻本が基づいた祖本であり、後に磧砂本の系統を形成する。一方、その二十一部の経典を欠落させた写本は、開宝蔵天禧本と契丹蔵が基づいた祖本とも言うべき存在で、後の高麗本系統の原型である。磧砂本は444部、高麗本は458部の仏教典籍の用語を収めており、両者を補い合わせると、合計465部の仏教典籍が確認できる。従って、周祖謨氏が『校読玄應一切経音義後記』で示した見解は誤りであることがわかる。『慧琳音義』は、『玄應音義』で解釈された仏教典籍328部を収めている。その中には、原文に対する抄録もあれば、削略・増補・修訂したものもあるが、他の『玄應音義』伝本と比べると、比較的、原型を保っていると考えられる。







  
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