金剛寺本『餓鬼報応経』について―テキスト校訂と問題点
大阪府河内長野市に位置する天野山金剛寺の中には、数万点に及ぶ金剛寺聖教のほか、約四千巻にのぼる一切経が所蔵されている。そのうち、金剛寺一切経は平安末期から鎌倉時代後期にかけて断続的に書写されたものを主体として構成されている。これまで金剛寺一切経の中から、『十二門経』や『安般守意経』などの貴重な古写経が発見され、多くの注目を集めてきた。
本発表では、その金剛寺一切経から見出された『餓鬼報応経』のテキストに注目し、この古写本を、金蔵趙城広勝寺本、宋磧砂本、高麗蔵再彫本、福州開元寺本や、西方寺一切経本(首闕、鎌倉時代写本)、七寺一切経本(平安後期写本)によって校訂する際に浮かび上がってきた問題点を提示し、その解明を試みる。 |