国際仏教学大学院大学
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    平成18年度国際シンポジウム発表要旨 
    

   C. ウィレメン (ベルギー 王立海外学アカデミー会員)

「ダルマパダの漢訳諸本について」


1.説一切有部の発展
 説一切有部には二つの主要なグループがある。いわゆる毘婆沙師に代表されるカシミール地方の正統派と、論蔵が仏の直説であるということを信じない西部地方(主にガンダーラ)の経量部である。譬喩者とはマトゥラーに由来する律を奉ずる経量部の人々のことであり、かれらが継続発展して根本説一切有部となるのである。
 ガンダーラ派の実践修行の型は「智の実修(jñ
āna-yoga)」から「識の実修(vijñāna-yoga)」へと発展したが、その「識の実修」は『瑜伽師地論』の中に見い出される。

2.漢訳諸本
(1)『法句経』(大正蔵番号210):アバヤギリ派(無畏山寺派)のパーリ本ダンマパダ。説一切有部のダルマパダや他本の一部分を加えて増広したもの。
(2)『法句譬喩経』(大正蔵番号211):『法句経』の偈に譬喩物語を付したもの。
(3)『出曜経』(大正蔵番号212):譬喩者の法救(紀元後2世紀)が十二部から成る雑蔵を編纂したが、これはそのうちの第六番目に相当するウダーナである。
(4)『法集要頌経』(大正蔵番号213):ウダーナから選択して取り出された根本説一切有部のダルマパダ。
(5)敦煌本ダルマパダ(大正蔵番号2901):中国で撰述された経典。

3.『ウダーナヴァルガ』のサンスクリット写本
 スバシで発見されたポプラ材写本(P.H.Ms.)は『出曜経』のインド語原典に非常に近い。中国の敦煌写本からは特に新たな知見は得られない。中央アジアの『ウダーナヴァルガ』梵文写本に関するシュミットハウゼンの研究(1970年)を応用すれば、次の二つのことが知られる。一つは後代に属する写本の第一型は有部正統派に属するということ、もう一つは第二型が譬喩者・経量部・根本説一切有部の系統に属するということである。
 どちらの型もプラークリットをサンスクリット化したものであるが、第二型の方がより多くの散文を含んでいるため、第一型ほどにはサンスクリット化が進んでいない。
      
   *サンスクリット表記の都合上、上記の文章に一部Centuryのフォントを使用しております。
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