国際仏教学大学院大学
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    平成19年度第1回公開研究会 発表要旨



米田真理子(大阪大学非常勤講師)


千代野物語と三つの井戸-京都・鎌倉・岐阜をむすぶもの

 京都市上京区の本隆寺の「千代野井」、鎌倉市扇ガ谷にある海蔵寺の「底脱ノ井」、岐阜県揖斐郡揖斐川町の「千代河戸」はいずれも中世以来親しまれた千代野という女性の開悟譚に由来する。
 千代野はある尼寺で下女として働く女性である。比丘尼たちの座禅の姿に感銘を受け、下働きに努めながらも、修行に心を掛けて日を送り、ある明月の夜に、水を汲む柄杓の底が脱け、水とともに月影が流れた事を契機に大悟する。この話は、「千代野物語」などの名称のもと、絵巻物や奈良絵本に仕立てられ世間に流布したが、大阪府河内長野市の金剛寺には、その原型ともいうべき南北朝頃の草子が所蔵されている。「憂喜餘の友」と名付けられたその書は、本来この物語が問答体を全体の枠組みに持ち、禅に関わる経典や先師の語録などを駆使して著されたものであった事をうかがい知ることのできる一冊である。
 本発表では、本物語の生成と展開の過程を跡づけ、現代に至るまで受け継がれてきた様子を考察する。さらに、そのことを踏まえ、全国に点在する千代野の井戸の意味を明らかにしようと思う。 
 
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