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    第3回公開研究会発表要旨

石上和敬(武蔵野大学准教授) 


KaruNApuNDarIka<悲華経>の漢訳資料について 


  インドで成立した大乗経典KaruNApuNDarIka(以下、<悲華経>)には、二種類の漢訳が知られている。一本は、曇無讖訳『悲華経』十巻(大正蔵、第三巻、第157経。以下、『悲華経』)であり、もう一本は訳者不明で秦代の訳出とされる『大乗悲分陀利経』八巻(大正蔵、第三巻、第158経)である。本発表では、現存する両漢訳の写本、石経、版本等の諸情報を概観した上で、近年CD-ROM化により披見の機会を得た『悲華経』の正倉院聖語蔵本を中心に検討を加えてみたい。
 『悲華経』巻六~巻八に見られる、いわゆる釈迦の五百誓願は、内容的に同経の中でも枢要な位置を占めているが、この釈迦の五百誓願の部分に増広改変を加えた『釈迦如来五百大願(経)』二巻(栂尾山高山寺に二写本が伝来)と称する文献が、平安末期以降、流布したことが知られている。『悲華経』と『釈迦如来五百大願(経)』の対応関係等については、先学によっていくつかの角度から検討が加えられているが、このたび、聖語蔵本『悲華経』の五百誓願の部分に添えられた朱書の書き入れを分析するなかで、朱書の書き入れが『釈迦如来五百大願(経)』と密接な関係を有することが明らかになった。さらに、聖語蔵本『悲華経』の朱書の書き入れと、他文献に引用される『釈迦如来五百大願(経)』とを比較検討することにより、さらに広い視野から考察を深めることができた。
 本発表は、上記の如く、聖語蔵本『悲華経』に見られる朱書の書き入れに注目することから得られた新たな知見を紹介するものである。

  
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