国際仏教学大学院大学
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    平成20年度第1回公開研究会 発表要旨



箕浦 尚美(国際仏教学大学院大学学術フロンティア研究員)


     金剛寺本『観無量寿経』について―諸本校異からみた系譜―

 大阪府天野山金剛寺一切経の中に、長寛三年(1165年)書写の『観無量寿経』がある。書写時をさほど下らないと見られる詳細な訓点(天爾波留点(別流))は、当時の天台浄土教の学問を示しており、仏教学的にも国語学的にも貴重な資料である。
 『観無量寿経』の伝本には、敦煌・トルファンの写本が多数あり、藤田宏達氏『浄土三部経の研究』(岩波書店、2007年)に詳細な本文対照がなされている。本発表では、藤田氏の諸本対照表に依りながら、金剛寺本の位置づけを行う。日本の古写『観無量寿経』は、一切経版本とは本文系統が異なり、現行流布本も古写経本の系譜にあるが、平安後期以前の古写本は少ない。金剛寺本には、流布本とも異なる語句が含まれており、敦煌・トルファン写本に近い点が注目される。また、中尊寺経本や京博蔵装飾経本を検討したところ、これらにも敦煌本と一致する箇所があった。これらの異同は、日本伝来後の書写伝播段階で起こったものではなく、『観無量寿経』の複雑な成立過程を示すものと考えられる。



 
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