国際仏教学大学院大学
Home About project Event Publishing Link

  
    平成20年度第1回公開研究会 発表要旨


  林 敏(国際仏教学大学院大学 博士課程)


         日本古写経本『首楞厳経』について

 『首楞厳経』(『大佛頂如来密因修証了義諸菩薩万行首楞厳経』)は古来より真偽論争があり、漢訳ではなく中国撰述とする説が有力である。本経の概要は、如来蔵を説く見道分、持戒と持呪を強調する修道分、明心見性を目的とする証道分、邪道を分別する助道分などの修行実践法を教えている大乗経典であり、東アジア仏教に大きく影響を与えた経典であった。
 『首楞厳経』の刊本には、高麗版を始め宋版・元版・明版等多くの刊本がある。これらの刊本に基づき校訂された活字本大正蔵が存する。
  また、日本の流布本としては、日本達磨宗の僧勝弁が文治三年(1187)に将来した長水沙門子撰『首楞厳義疏注経』を基にして流布した、いわゆる流布本がある。加えて、8世紀から10世紀にかけて書写された敦煌写本もある。
  ところで、日本の金剛寺一切経・興聖寺一切経・中尊寺一切経などの平安鎌倉古写経を調べていくと第七巻が流布本と大きく相違していることが分かった。この平安鎌倉古写経は奈良写経の転写本と想定される。本経が唐から伝来した最初は、奈良朝の養老二年(718)と思われるが、この時は大安寺僧の道慈(?~744)が本経の一部分を将来したようである。下って天平八年(736)に普照(?~759~?)が他人を介して全十巻をもたらした。
 今回の発表では、日本古写経本が、中国で成立した当初の姿をとどめていることを示したいと考えている。



 
Home About projectEventPublishingLink
Copyright 2000-2004 International College for Postgraduate Buddhist Studies