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  発表要旨   
 

高田時雄京都大学人文科学研究所教授

高宗期における『西域記』テキストの変改について―日本古抄本による検証


(English)

 『大唐西域記』は貞観二十年(646)に完成し、その七月十三日太宗に呈上された。しかしながらこの最初のテキストは高宗の顕慶元年、于志寧等に命じて玄奘の新訳経論を看閲潤色せしめたとき、同時に多少の変改を受けたらしい。全体としてはそれほど大きな変化は生じなかったと思われるが、一部組織的に行われたと見られる変改が存在する。日本古抄本は唐代の正しいテキストを保存する点で、『大唐西域記』のテキストの変遷を考える上で、敦煌の断簡とともに極めて貴重な材料を提供する。
 拙文では現在目睹し得る限りの日本古抄本、敦煌本と現行の蔵経本のテキストとを比較することで、上記の組織的な変改の事実を明らかにする。同時に、この組織的な変改が如何なる意図をもって行われたのかという点についても推測してみたい。蓋しこの変改は玄奘が『西域記』編述に際して用いた材料とも深い関係を有すると思われ、『西域記』の資料性にも多少の影響が及ぶかも知れない。
  
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