平成22年度 第1回公開研究会
日時
平成22年5月22日(土) 午後3時~4時半
会場
発表者
橋本 貴朗 (國學院大學 助教)
徳運寺蔵『金光明最勝王経』巻第九の文字―異体字を中心として―
【発表要旨】
徳運寺は、愛知県新城市の臨済宗方広寺派の寺院で、平安時代末期から江戸時代後期にかけての一群の写経・版経を所蔵している。その中には、遠江国(現在の静岡県西部)の武士・源遠平夫妻を願主として、承安四(1174)から治承(1179)に至る前後数年にわたって書写された一切経の一部が含まれる。安元(1175)の奥書を有する本『金光明最勝王経』巻第九もそのうちの一巻である。
近年の古写経研究の成果により、奈良写経が中国・唐代の仏典を忠実に伝えるものであること、平安・鎌倉写経の多くがその奈良写経の転写本であることが明らかとなってきた。こうした書写系統を跡づけるうえで注目されるもののひとつが、通行の字体(文字の骨組み)とは異なるもの、異体字の存在であろう。
本発表では、敦煌写経と対照しながら、異体字を中心に当該経巻の文字の諸相を見てゆくことにしたい。
宮井 里佳(埼玉工業大学 准教授)
アジアで読まれた『金蔵論』-敦煌写本・日本古写本・高麗版本を通して-
【発表要旨】
『金蔵論』は、中国北朝末期(6世紀後半)に道紀によって編纂された仏教の要文集である。『金蔵論』は、早くに散逸してしまい、『義楚六帖』などによって抄出引用された部分はあるものの、昭和初期に日本古写経(興福寺蔵本・大谷大学蔵本)が発見されるまで、その内容は知られなかった。近年、荒見泰史氏が敦煌写本の存在を指摘し、我々もさらなる敦煌写本を認め、さらに崔鈆植氏が韓国・高麗後期の梵魚寺蔵版本の存在を発表するに至った。こうして現在、『金蔵論』の七巻本と推定されるもののうち、第一、第二、第五(冒頭を欠く)、第六巻が明らかとなり、『金蔵論』研究は新たな段階に入ることができるといえよう。北周の鄴で編集された『金蔵論』は、敦煌、日本、韓国に伝わり、さらにトルファンにも伝わっていることが推察されることから、広くアジアで読まれた書であることがわかるのである。この流布状況は、『金蔵論』が重要な書であったことを物語っている。それは、日本の平安期における『金蔵論』の重要性、すなわち、最澄が読んだ書として知られ、また『今昔物語集』天竺部の成立に大きく影響していることからも裏付けられる。
今回は、新たに解読を進めた高麗版本を含めた現存の写本や版本から判明する『金蔵論』の構造や内容について考察を加えたい。
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