平成24年度 第2回公開研究会
日時
平成24年11月10日(土) 午後3時~4時半
会場
発表者
田戸 大智 (本学 日本古写経研究所 特任研究員)
日本中世における論義―身延文庫蔵「大乗義章抄」を中心に―
【発表要旨】
論義とは、法会において仏教の教義や経典の内容等について問答することを意味する。中国では南北朝時代の頃から経典を講説する法会が重視され、それが百済経由で日本に伝えられて次第に整備されたことにより、南都三会(興福寺維摩会・宮中御斎会・薬師寺最勝会)や北京三会(円宗寺法華会・同最勝会・法勝寺大乗会)、更に格式の高い三講(法勝寺御八講・宮中最勝講・仙洞最勝講)等をはじめとする多様な法会が生み出された。
法会を執行する目的には、悔過や経典講説、論義等の数種類が存在する。中でも、特に重要なのは論義であり、この論義での問答が仏教諸教学の理解を深め、教学の発展に大いに寄与した。但し、こうした論義関連の資料は、東大寺や薬師寺等に多数現存しているが、あまり研究が進んでいないというのが実状である。
ここで取り上げる身延文庫蔵「大乗義章抄」は、浄影寺慧遠(523~592)の主著とされる『大乗義章』の諸項目に関する議論をまとめた論義書であり、勧修寺法務や東寺長者を歴任した寛信(1084~1153)が東大寺内の三論宗徒による「大乗義章三十講」の内容を抄筆したものと推測される。
本発表では、論義が隆盛となる中世にいたるまでの論義の変遷を十分踏まえたうえで、この「大乗義章抄」を素材として取り上げ、その内容や形式を比較検証することで問題点を浮き彫りにしたいと考えている。
本井 牧子(筑波大学助教)
新出の『金蔵論』敦煌本断簡
【発表要旨】
中国北朝末期に釈道紀によって編まれた『金蔵論』は、『賢愚経』、『撰集百縁経』といった譬喩経典から譬喩因縁譚を抄出し、テーマ別に類聚する書である。日本に伝存する古写本の存在が学界に知られるようになった昭和初期以降、『金蔵論』研究は日本古写本のテキストにもとづいて進められてきた。しかしながら、伝存する古写本は完本ではなく、それ以外の部分については、早くに散逸してしまったものと考えられていた。ところが、ここ十年ほどの間に、敦煌写本や高麗時代のものとみられる版本があいついで確認され、2011年から12年にかけて、それらの新出テキストが中国、韓国、日本の三ヶ国で公刊されるなど、『金蔵論』テキストをめぐる状況は著しい進展をみせている。現時点では全七巻ないし九巻とされる『金蔵論』のうち、四巻分のテキストが参照可能になっている。
さらに、これらのテキストの公刊直後からも、関連資料が陸続と発見されている。本発表では、それらの新出資料のうち、俄蔵(ロシア科学アカデミー サンクトペテルブルグ支所 東洋学研究所所蔵)の敦煌写本をとりあげて検討を加えることとする。小さな断簡ではあるが、『義楚六帖』に引かれる逸文や、『金蔵論』と同系統のテキストを収める『法苑珠林』、さらには紙背などを手がかりに写本の復元を試み、それらが『金蔵論』の一部であることを示したい。
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