平成26年度 第2回公開研究会
日時
2014年11月8日(土)午後3時~午後4時半
会場
発表者
小島 裕子(国際仏教学大学院大学日本古写経研究所 特任研究員)
一切経と一切経会 -経供養という法会儀礼の視点から-
【発表要旨】
日本に文化的遺産として所蔵される古写経や請来版本の一切経の存在意義が、文献学研究や歴史学研究などから深められ、構築されて現在がある。先行する研究の中で、一切経を本尊とする一切経会の歴史についてもまた明らかにされてきたところであるが、その法会自体がどのように行われてきたかの詳細については、いまだ解明すべき検討の余地が残されていよう。 そのはじまりは、藤原頼通によって行われた摂関家の宇治平等院一切経供養であるとされるが、これを模したとされる院政期の一切経会の法会次第が仁和寺聖教の中に存する(『紺表紙小双紙』所収「法金剛院一切経供養」「唐本一切経供養」)。一切経会については、公家の日記や『舞楽要録』に記録が残されているものの、いずれも簡略なものに過ぎない中で、同資料は法会の次第展開を知り得るものとして貴重である。 本報告では、一切経を書写或いは版本の一切経を請来し経蔵に納めるという一大事業の一端に位置づけられる「一切経会の法会次第」を具体的に読むことから、そこに顕現する一切経の機能を考察してみたい。 一切経会は典型的な舞楽四箇法要として行われ、音楽法要としての要素が多分にあることから、これまで音楽・芸能研究の分野からの注目が主であったが、経供養という法会儀礼の視点から、これを少しく捉え、一切経研究の一助にすることができればと思う。
矢野 道雄(京都産業大学 特任教授)
宿曜経の大蔵経本と和本の比較
【発表要旨】
『宿曜経』はインド人アモーガヴァジュラ(Amoghavajra, 中国名不空)が口述したインド占星術の要約を中国人の弟子史瑤が筆受したもので、759年に「初訳」が終わった。しかしこれに満足しなかった不空は天文学者楊景風に改訳を命じ、764に完成した。初訳と改訳は大蔵経では『宿曜経』の下巻と上巻として伝えられた。不空の弟子の恵果に師事した空海はほぼ原型のままの『宿曜経』を806年に請来した。これが「和本」と総称することのできるものの原本である。大陸ではインド占星術の「中国化」が押し進められ、原型は大きく変形していったが、空海請来の和本は忠実にコピーされ続けた。高野山にもいくつかの写本が現存しているが、日本各地に伝えられる一切経のなかにも『宿曜経』は含まれている。本講義ではこれら空海請来本に源を発する和本と大陸系の大蔵経本の違いを明らかにし、日本に伝えられる教典資料が大陸の資料よりもはるかに原型に近いことを例証する。
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