平成26年度 第1回公開研究会
日時
2014年5月10日(土)午後3時~午後4時半
会場
発表者
佐藤 礼子(京都大学 非常勤講師)
義浄の訳経事業と唐代伝奇
【発表要旨】
仏教が中華の地にもたらされる過程で、その文化に与えたインパクトの大きさについては、既に教学、歴史双方の観点による無数の先行研究が存在している。しかし、当時の民間における仏教受容の程度を、通俗的な記事を残すといわれる志怪、伝奇、雑伝類など、現在「小説」分野に位置づけられる伝世文献から探ってみると、その前後には文献が存在するにもかかわらず、初唐末から盛唐にかかる約一世紀の間に、目立った作品が残っていない。なぜこの期間には仏教の影響を看取しうる小説がないのか。この時代に、続く中唐に花開く唐代伝奇に繋がると推測されるどのような事象が進行していたのか。これらの問いを明らかにするため、義浄の根本説一切有部律を鍵として、先行研究を示しつつ、この時代の「小説」(的なもの)の一端を示してみようとするのが本発表の趣旨である。発表においては、義浄の訳経事業により訳出された根本説一切有部律の別生経(一巻ではあるが七寺一切経に唯一現存する)に着目し、この経典が持つ、それまでの中国には存在しなかった虚構の要素・長編の叙事について論じる。
藤原 重雄(東京大学史料編纂所 助教)
桂大納言入道(葉室光頼)出家後の動向 ―岩屋寺蔵『高僧伝』訓点に寄せて―
【発表要旨】
近年、落合俊典氏の調査によって、岩屋寺(愛知県南知多町)所蔵の宋版大蔵経に含まれる『高僧伝』には、深い内容理解に基づく詳細な訓点が施されていることが報告された。永仁元年(1293)高山寺経弁の巻末識語によれば、「桂大納言入道殿自筆之点本」から移点されたようである。「桂大納言入道殿」とは藤原光頼(1124~73)で、勧修寺流諸家のひとつ葉室家となる流れに出自をもつ。井上宗雄氏によってその伝記はほぼ整理されているが、長寛二年(1164)に権大納言を辞して出家した後の消息はあまり知られていない。そこで、承安元年(1171)に仁和寺文化圏のもとで広沢流(西院流)の灌頂を受けた際の日記を手がかりに、いくらか事蹟を加えたい。中世の葉室寺(浄住寺)や中世前期における実務系貴族の仏教への関わりについても、若干言及できればと考えている。
問い合わせ
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国際仏教学大学院大学 事務局〒112-0003 東京都文京区春日2-8-9
電話 03-5981-5271
FAX 03-5981-5283
Email nihonkoshakyo14◆icabs.ac.jp(◆をアットマークに変えてください)
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