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新羅仏教における『大乗義章』の影響 

平成26年度国際シンポジウム発表要旨
金 天鶴(東国大学校学術院 HK教授)

本稿は地論宗後期の学僧である慧遠の『大乗義章』が新羅仏教に与えた影響について検討するものである。彼の文献がいつ新羅にも将来されたのか未だ不明であるが、元暁よりその活用が確認され、表員に多くの引用が見られる。しかし、これまで新羅仏教における『大乗義章』の受容に関するまとまった研究は管見の限りないようである。
新羅の華厳宗には、義相の講義録として判明した『華厳経問答』に地論師の主張が批判され、また、表員(745年頃活動 )の『華厳経文義要決問答』と見登の『華厳一乗成仏妙義』に引用されている珍崇により地論学派懍師の『法鏡論』が多くの引用されている。とりわけ、表員の懍師の受容については、地論と華厳の融合形態というべき新たな華厳思相の構築という観点から理解できる。表員は『大乗義章』をも多く引用しているため、新羅華厳における新たな潮流の観点から付け加えることができる。
なお、元暁の『大乗義章』の受容については、表員のケースとは異なる解釈になるが、新たな思想の構築につながることは間違いないと考えられる。 以下、新羅仏教の『大乗義章』の受容を新羅華厳思想の新たな構築という観点から検討する。
ここで研究の対象と方法について簡単に述べる。まず、元暁の著述に与えた慧遠の影響を検討する。元暁(617-686)は、当時の仏教思想について幅広く研究し、宗要類をはじめ、疏、記などを著しているが、引用名を殆ど記していない。慧遠についても同様であるが、彼の『涅槃宗要』に『大乗義章』の「仏性義」や「涅槃義」からの活用が指摘され、それに関する先行研究が存する。ここではその研究を踏まえながら、必要に応じて一々検索をかけて調べ、その意味について詳しく検討する。
次に表員(745年頃活動)の『華厳経文義要決問答』について検討する。この文献には 遠師、遠公という引用名で『大乗義章』が活用されており、その引用箇所の原文を探し比較することによって、引用のパタンーを詳しく検討することができる。
こうして引用ないし活用された文脈を詳しく調べることによって、慧遠の『大乗義章』が、新羅仏教にどのような影響を与えたのかを分析し述べることができる。

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