日本古写経善本叢刊 第三輯
『観無量寿経・無量寿経優婆提舎願生偈註 巻下』
『観無量寿経』は、阿弥陀仏などの観想方法を説いた経典で、所謂る「浄土三部経」の一つに数えられます。長寛三年(1165)書写の金剛寺蔵本は、朱書と墨書で加点されているのが特徴です。そこで本書では、それら二種類の訓点に基づく訓読文を、朱書は赤で、墨書は黒で表記し、フルカラーで全文の写真を掲載しています。更に、読者の便宜を図るため、表紙折り返し裏にヲコト点の点図と仮名字体表を配しました。訓点の分析から、金剛寺蔵本は叡山で用いられた訓点を使用している事実が明らかとなりました。
『無量寿経優婆提舎願生偈註』は、中国南北朝時代に浄土教に帰依した曇鸞(476~542)の著作です。保延四年(1138)写の金剛寺蔵本は残念ながら巻下しか現存していませんが、朱書により加点されています。その訓点は上記の金剛寺蔵『観無量寿経』と同じく叡山で用いられた点であることがわかってきました。
本書所収の二種の古写本は、共に叡山に深く関わりのある文献であり、日本浄土教史研究において必見の一冊でしょう。
内容
緒言 今西 順吉
資料篇
- 金剛寺蔵長寛三年写『観無量寿経』
(影印・訓読・解題 金水 敏・廣坂 直子・岡崎 友子)
(諸本校異 箕浦 尚美) - 金剛寺蔵保延四年写『無量寿経優婆提舎願生偈註』巻下
(影印・翻刻・訓読・解題 三宅 徹誠)
論攷篇
- 『観無量寿経』の本文-「称南無無量寿仏」を含む伝本をめぐって-箕浦 尚美
- 金剛寺蔵保延四年写本より見た日本における『無量寿経優婆提舎願生偈註』の伝承-三宅 徹誠
あとがき 落合 俊典