日本古写経善本叢刊 第二輯
『大乗起信論』
真諦訳『大乗起信論』は、大乗仏教の重要思想である如来蔵思想を簡潔かつ論理的に展開した論書で、東アジア世界の仏教者によって盛んに研究され、中国・朝鮮・日本の仏教に多大な影響を及ぼしてきた文献です。日本古写経善本叢刊第二輯である本書の特徴は、金剛寺蔵本などの古訓点本『大乗起信論』の訓点解読と解説を行うことによって、中世日本における『大乗起信論』の読みを明らかにしていることです。このことにより、東アジア仏教に最も深遠な影響を与えた『大乗起信論』に対する文献学的・思想的研究の更なる発展への貢献が期待されます。
本書では真諦訳『大乗起信論』の写本や刊本を七点取り上げています。そのうち影印で紹介しているのは、金剛寺一切経本(附翻刻・訓読)、金剛寺聖教本、京都大学人文科学研究所松本文庫蔵宋思渓版本・根来版本・平安時代写本の五本です。真福寺蔵本、金剛寺蔵正嘉二年(一二五八)刊本(残本)の二本については、翻刻や解題などで紹介しています。
内容
- 金剛寺一切経本『大乗起信論』の思想的特徴 木村 清孝
- 『大乗起信論』五本の訓点について 宇都宮 啓吾
- 金剛寺一切経本『大乗起信論』影印・翻字・釈文
(翻字本文・釈文 宇都宮 啓吾) - 金剛寺聖教本『大乗起信論』解題・影印
(解題 落合 俊典) - 京都大学人文科学研究所松本文庫本『大乗起信論』解題
京都大学人文科学研究所蔵真諦訳『大乗起信論』について 梶浦 晋
京都大学人文科学研究所松本文庫本 宋思渓版『大乗起信論』影印
同 根来版 『大乗起信論』影印
同 平安時代写 『大乗起信論』影印 - 真福寺本『大乗起信論』解題・翻刻・訓読
(解題 池 麗梅、 翻刻・訓読 落合 俊典)